虐げられた公爵令嬢は吸血伯に溺愛される~孤独な辺境伯は青薔薇の愛を手に入れる~ - 束原ミヤコ
第1巻 内容紹介
父が何か言う前に、階下がやけに騒がしくなった。使用人たちが制止をする声と、足音が響いている。クラーラやアラクネアの叫び声も聞こえる。
近づいてくる足音に、父とマリスフルーレは何事かと、開け放たれたままの入り口を見る。
「マリスフルーレ!」
部屋に入ってきたのは――黒い立派な軍服を着てマントを身に着けた、この世のものとは思えないほどに、美しい男性だった。
夜の闇を切り取ったような深い色あいの、肩まで伸びた滑らかな黒髪が軽やかに揺れている。まるで宝石がそのままはめ込まれたような、血のように赤い瞳。高い鼻梁に、薄い唇。軍服に包まれた長身で逞しい体躯は鍛え抜かれた戦士のそれであり、堂々とした存在感を放っている。
彼はずかずかと部屋の中に入ってくると、マリスフルーレの前で両手を広げた。
「会いたかった、マリスフルーレ。迎えに来たよ!」
美しい顔に満面の笑みを浮かべて、その男性は言う。
「あなたは……」
「あぁ、マリスフルーレ。なんと可憐な声だろう! 俺は、ルカ・ゼスティア。突然で驚いただろうが、俺は君を一千万フィリンで買った。たった一千万フィリン! 愚かな公爵は、君の価値がわからないようだ。全く嘆かわしい!」
ルカ・ゼスティア。彼が、辺境の吸血伯。
マリスフルーレは何度か、彼について想像したことがある。マリスフルーレの中の彼は、死神の鎌を持ち、黒いローブを着て青白い顔をした恐ろしい姿をしていた。
けれど本物のルカは、妙に陽気で明るく、そして――堂々としている。
マリスフルーレの身に降りかかったおそろしいできごとなど、まるでなかったかのように。すべてを吹き飛ばしてしまうように、低くよく通る快活な声が薄暗い屋根裏に響く。
花もいけられていない母の部屋からは、どういうわけか気怠く甘い花の匂いがした。
――ミュンデロット公爵家の娘、マリスフルーレの母が死んだ。
その日からマリスフルーレの生活は一変してしまった。父が愛人とその娘を連れて帰ってきたのだ。優しい使用人たちは追い出され、マリスフルーレも屋根裏部屋に追いやられた。
母の残した公爵家を守らなくてはいけないという思いもむなしく、マリスフルーレは虐げられる日々を送ることになる。
母と仲が良かった王妃の計らいで第二王子メルヴィルとの縁談が決まるものの、悪辣な腹違いの妹クラーラの策略によりマリスフルーレは窮地に立たされてしまう。
そこに救いの手を差し伸べたのは、敵兵の首をはねてその血を飲んでいる吸血伯と噂されている、辺境伯ルカ・ゼスティアだった。
ルカは噂とは違いほがらかで優しい人で、マリスフルーレをとても大切にしてくれた。
彼のおかげでマリスフルーレは失っていた強さをとりもどしていくが、ルカには何か秘密があるようで──
編集部より
人気作品がミーティアノベルスに登場!
名門公爵家の娘でありながら、家族に虐げられ、屋根裏部屋で孤独に過ごしていたマリスフルーレ。唯一の味方だった母を亡くし、愛猫さえも人質に取られ、彼女は絶望の淵にいました。
そんな彼女に舞い込んだ第二王子との婚約話。しかし、それも義妹の策略によって破談となり、無実の罪を着せられたまま、〝吸血伯〟と恐れられる辺境伯・ルカに売られてしまいます。
恐ろしい化け物の生贄になる……そう覚悟したマリスフルーレを待っていたのは、噂とはかけ離れた美貌の青年と、甘すぎるほどの溺愛生活でした!
孤独だった少女が、最強の辺境伯に愛され、幸せを掴む逆転劇の幕開け、ですが――?
全2巻でお送り予定の電子書籍版では、1・2巻合わせて10万字以上の大幅な加筆修正を加え、さらにドラマチックに!
初めての方はもちろん、WEB版をお読みの方も、ぜひぜひお楽しみください!





















