「その花の名前は」 - 青波鳩子

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その花の名前は - 青波鳩子

内容紹介

 ロルダン殿下と私は、こうして狭い馬車の中にいても目が合うことはなく、馬車の窓ガラスに映る暗い金色の長い髪をした私の姿が見えているのは私だけなのだろう。

 きっと、殿下の目には私は透けていて、馬車の内装である赤いビロードだけが見えているに違いない。

 それでも構わなかった。

 もう、こうしたロルダン殿下の態度のことで、心に傷がつく場所など残っていないのだから。

 

 学園に着くと、いつものようにロルダン殿下が先に馬車を降りる。

 制服についた皺を伸ばしたいのか、埃を掃いたいのか、パンと大きな音を立てて制服を叩いたロルダン殿下は、早足に門に向かっていく。

 その頬を叩いたような音は、馬車の中に大きく響き、まるで私を拒絶しているかのようだった。

「それもこれも今日で終わりよ」

 小さく声に出してみたら、心が軽くなった。

 私の、とある決意がこれからの自分の人生を大きく変える。

 ロルダン殿下に手を取ってもらえるわけでもない私は、その第一歩として背中に羽が生えたように、ぴょんと馬車から飛び降りた。

 

 公爵令嬢デルフィーナは、婚約者であるロルダン王太子にぞんざいに扱われ、その取り巻きの者たちからも毎日のように嫌がらせを受けていた。実の父からも疎まれており実家に帰る場所もないけれど、王太子との婚約を辞退する決意をし、王妃に『王妃の秘薬』を求めた。

 それは、王妃教育の中で王家の秘密を知った王太子の婚約者が、王妃教育終了の過程で必要の可否を選択できる特別な薬であった。その秘薬を望めば、三日間だけ王太子の魂と入れ替わり、それまでの記憶を消した上で、婚約したことがなかったことにされる。そうして、新しい身分で人生を再スタートさせることができるものだった。

 ただ、デルフィーナにはたったひとつだけ心残りがあった。

 もう最後だと勇気をだして心残りを解決し、王妃の秘薬を飲み干した。

 一方、秘薬の影響でデルフィーナと魂が入れ替わったロルダンは、これまで知らなかった『真実』を目にすることになり――。

 

編集部より

 人気作品がミーティアノベルスに登場!

 公爵令嬢という立場にありながら、婚約者を含めた周囲から疎まれ虐げられていたデルフィーナは、逃げ場のない辛い日々を送っていました。しかしついに王太子との婚約を辞退する決意をした彼女は、特別な効能のある「秘薬」を飲む決意をします。

 その決意は、周りの人の人生を大きく動かし、自身も思いもしなかった結末を迎え――

 

 電子書籍版書き下ろしでは、入れ替わりを経験したあとのロルダンの心情と行く末の真相を収録。未読の方はもちろん、WEB版をお読みの方もぜひお楽しみください!

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