「婚約者が猫に私の名前をつけまして」 - 柳葉うら

# ミーティアノベルス # 新刊情報

婚約者が猫に私の名前をつけまして - 柳葉うら

内容紹介

 恐る恐る見上げれば、そこには憎たらしいほど秀麗な見目の、大っ嫌いな婚約者の顔がある。さらに腹立たしいことに、たまにしか私を見ない空色の瞳が、いまはしっかりと私を捕らえてるのだ。

 この人は私の婚約者である、オリヴェル・ロイヴァス様。

私より二つ年上の二十歳で、王太子殿下の護衛騎士。そして、由緒正しいロイヴァス侯爵家の次期当主。

「にゃっにゃにゃっ?!」

 彼の名前を呼んでも、口から出てくるのは猫の鳴き声。これでは、なにを言っているのかわかってくれないわね。悲しい現実を突きつけられ、改めて肩を落とした。 

「そうかそうか、それならうちにおいで。ちょうど今夜は、一人でいたくないんだ」

 オリヴェル様はちっとも猫語をわかっていない。そのくせ、いいように解釈し、満足げに頷く。

 お気楽な人ね。あなたのせいで、私がこんな目に遭っているのに!

 逃げようとしても、オリヴェル様ががっちりと抱きしめているものだから、手も足も思うように動かせない。さらに腹が立った。

「フーッ!」

「怖がらなくていい。お前のことを大切にするから、俺のそばにいてくれないか?」

 まさか、猫を相手に告白しているの?

 婚約してから約十年間、一度も聞いたことのない愛の言葉を、猫の姿になって初めて言ってもらった。

「にゃ……」

 信じられない。もう頭がついていけない。茫然と呟いた言葉を、オリヴェル様はまたいいように解釈したようだ。

「そうか、ありがとう。これからよろしくな」

そう言い、とびっきりの笑顔を浮かべて頬擦りしてくる。私は返事していないわ。「うそだ……」って呟いただけなのに。

「名前はどうしようかな?」

 名前なんてどうでもいいから、とにかく放してほしいわ。

数分前までは暖かい部屋に入りたいとか、ご飯を食べたいと思っていたけれど、それらをオリヴェル様に叶えてもらうのはごめんだわ。一次欲求に苦しめられようが、とにかくオリヴェル様のそばにはいたくない。

 逃げる隙を探していると、不意にオリヴェル様が目線を合わせてきた。

「イェレナ」

 そして、私の名前を呼ぶ。

「にゃっ?!」

「そうか、気に入ってくれたか」

 違うわ。驚いたから鳴いてしまっただけよ。仮にも婚約者の名前を猫につけるなんて、どういうつもりなの?

  

 ずっと冷たい態度だった婚約者に、異常なほど溺愛されています?!

「オリヴェル様、婚約を破棄してくださいませ」

 男爵令嬢のイェレナは我慢の限界だった。婚約者である候爵家の令息オリヴェルは、婚約してから約10年間、ずっとイェレナに対して冷たい態度をとってきたのだ。

 彼に婚約破棄してもらおうと呼び出したのだが――そこに現れた男爵令嬢のヒルダによって、魔法で猫の姿に変えられてしまう。

 誰にも気づいてもらえず彷徨っているイェレナを拾ったのは、なんと大嫌いなオリヴェルで――!?オリヴェルの屋敷に連れて行かれたイェレナは、オリヴェルが次々と見せる奇行によって、実は自分に対して重すぎる愛情を抱いているという事実を目の当たりにする。

「はやくイェレナを見つけなきゃ。見つけて閉じ込めておかないと」

(人間に戻れても平穏な生活が送れないかもしれない。もしかしたら、猫のままでいた方がいいかも……)

 婚約者が秘めていた異常な執着に驚愕したイェレナは、彼を観察する事にした。

 婚約者に愛想を尽かせた負けん気の強い令嬢と、そんな彼女を幼い頃から一途に溺愛し続けてきた、こじらせヤンデレ重症イケメンのすれ違いラブコメディ。

 

編集部より

 人気作品がミーティアノベルスに登場!

 魔法で猫に変えられてしまった男爵令嬢・イェレナ。彼女を拾ったのは大嫌いな婚約者、オリヴェルでした――

 ずっと冷たい態度を取り続ける彼に愛想が尽きていたイェレナでしたが、猫の姿になったことで彼が自分に愛情……重すぎる愛情を抱いていることに気づき……?

 電子書籍版限定の書き下ろしもたっぷり! WEB版から約2万文字加筆し、2人のドタバタな新婚旅行の様子を追加。また、番外編も2本収録しており、その後の二人の日常をお楽しみいただけます。既にWEB版をお読みの方もぜひお楽しみください!

こちらもおすすめ
当社作品 配信中の書店様