「喫茶バトラコスの嘘吐きな客人」 - 宮地拓海

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喫茶バトラコスの嘘吐きな客人 - 宮地拓海

内容紹介

「 え?」と声を上げる暇もなく、その白いぶよっとしたものはわたしの顔に張り付いた。

 これは一体、なにごと?

 冷静に努めようとする頭とは反対に、全身から汗が噴き出していく。

 事態を把握するべく、顔面に張り付いたぶよっとした物体を両手で掴み顔から剥ぎ取る。

 わたしの手の中に、すっごく大きなカエルがいた。

「ぎゃぁあああ!」

 叫んだね。

 叫んださ。

 それが何か? 悪い!?

 期待や夢に胸を膨らませている人が明日へ向かって歩き出している中だろうと関係ない。わたしには叫ぶ権利がある。

 だって、こんなうららかな春の日に、突然顔面にカエルが張り付いてくるなんて、どれだけの確率で起こり得る現象なの?

 突然わたしに無礼を働いた見たこともない巨大ガエルに制裁を――と、八つ当たりの矛先が弱い生物に向きかけた時、わたしの前にハンカチが差し出された。

「ごめんね。いつもはもっと大人しいんだけど」

 ハンカチの主は、非常に顔の整った柔和そうな青年。

 ふわりと柔らかそうな落ち着いた色合いの茶髪が優しげな瞳と相まって、見る者に安らぎを与えてくれるような……つまり、有り体に言えば癒やし系イケメンだ。

 しかしながら、白いシャツの上に黒のベストという服装がデキる男然としていて、少しドキッとしてしまう。ちょっと、いやかなり、カッコいいのではないだろうか。

 彼が、このカエルの飼い主なのだろうか。

 入学や就職は人生の岐路だと言われる。

 新たな生活の第一歩を踏み出したその日に、思わず目を奪われるようなイケメンと出会えたことは僥倖なのではあろうが、この出会い方はもう少しなんとかならなかったものだろうかと思わずにはいられない。

   

「大佐はね、人の嘘を見破る特別なカエルなんだよ」

 駅前商店街の外れにひっそり佇むレトロな喫茶店『バトラコス』

 その喫茶店では、頭脳明晰、けれどグータラなマスターである古馬覚と、質実剛健、けれど可愛い物好きな従業員の加藤三郎。そして、人の嘘を見抜く特別なカエル『バトラー大佐』が出迎えてくれる。

 今年入学したばかりの女子大生 小里愛は、ある日マスターに誘われ喫茶バトラコスへと入店する。特別なカエル『バトラー大佐』に次から次へと嘘を見抜かれ、これまで誰にも話すことが出来なかった悩みを打ち明ける。

「わたし……、ママに見捨てられちゃったんです」

 個性的な店員と特別なカエルが、嘘の裏側に隠された本当の気持ちを解き明かす――。

 

編集部より

 ミーティアノベルス完全書き下ろし作品!

 女子大生の愛は、ひょんなきっかけ(大きなカエルが顔面に張り付いたこと!)からイケメンマスターに、喫茶店『バトラコス』へ誘われます。

 愛に張り付いたカエル、バトラスコ・アリシア・カポディストリアス三世――通称バトラー大佐の「嘘を見破る」特別な力と、マスターたちの人柄によって、愛は悩みを打ち明けることに……

 カエルの名を冠した喫茶店を舞台に、すこし不思議で温かな物語が幕を開けます! ぜひお楽しみください!

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