私は秘密を抱えている。本当はロボットではないという秘密を。「愛してもいいですか?」 - 橘智一

# ネット文庫星の砂

愛してもいいですか?- 橘智一

内容紹介

「二一三〇年、人類はついに理想の社会を手に入れました。一家に一台ロボットの時代はもう終わりです。ひとりに一台ロボットを! 真弓グループは、あなたの《快適な暮らし》を応援しています」

高層ビルの電光掲示板が、同じ映像を繰り返し流していた。

灰色がかった空と汚れた空気の中で、掲示板だけが不自然に煌々と輝いている。

掲示板に目をやる人間は、もはや誰もいない。見飽きたCMからか。自分たちが真弓グループで作られた「ロボット」だからか。

今では街中にロボットがあふれている。街ですれ違っても、誰が人間で、誰がロボットか、分からない。

彼らは怖いほど完全だ。

均整な顔立ち。バランスのとれた肢体。体にある「ほくろ」さえも、製造過程においてあえて作られた「個性」となる。

真弓グループが開発した「ロボット」は、限りなく人間に近く、能力は人間以上だった。

掃除は掃除ロボットが。会計は会計ロボットが。農業は農作業ロボットが。接客でさえ接客ロボットが誕生し、ごく一部の専門職、技術職以外、ロボットが行うようになり、社会は便利になったかのように見えた。

確かに人々の暮らしは向上した。

そして、人類の9割の人間が職を失った。

わたしもそのひとりだ。

 

第6回星の砂賞 審査員特別賞受賞作品

『愛してもいいですか?』

2130年。

人類は「夢の世界」を実現した。

生産物、農作物、工業製品、すべての生産を担うのは大規模な無人工場だ。

掃除は掃除ロボット。

会計は会計ロボット。

主な労働はロボットがまかない、社会は全人口の1割の労働でまかなえるようになった。

「理想」とも思える世界だったが──。

人々は仕事を失った。

仁菜もそのひとりだ。

大富豪の真弓家で働くことを決意し、面接にのぞむものの、面接当日、御曹司、真弓蓮の専属メイドロボットを壊してしまう。

ロボットを弁償するお金などあるはずない。

蓮は冷血漢といわれるほどの仕事の鬼だ。

壊したことを打ち明ける勇気も持てない。

仁菜は「ロボット」になりすまし、蓮の専属ロボットとなる。

正体は誰にもいえない。

そしてもちろん、主である蓮に恋心を抱くことは絶対に許されないのだが──。

テーマ「秘密」

 

編集部より

連の専属メイドロボットに成りすます仁菜。

お互いを信用できない二人は、お互いの隠す「秘密」を共有して、信用したいと望んだ。

メイドロボットの秘密、そして……主人の秘密を。

人間である仁菜はロボットのふりをしながら、主人である連に恋心を抱いてしまう。

叶うはずのない恋と、謎に包まえれた連の秘密。

真実は、全て結末の中に。

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